著名な文化人達が、書画会をしたり詩作の指導をしたりして潤筆料<ジュンピツリョウ>を得ながら旅をすることを遊歴<ユウレキ>というそうです。
そして現代ほど物流、交通、通信が発達していない江戸時代にはこうした著名文化人の遊歴が多く行なわれました。
通称「北信濃」と呼ばれた長野県須坂市のある長野県北部地域にも多くの遊歴文化人が訪れたのです。
興味をひいた本から
江戸時代後期の漢詩人であった「柏木如亭<カシワギジョテイ>」は遊歴を通じて、行く先々で食べた美味しいものと旅の記録に漢詩を結合させ「詩本草<シホンゾウ>」という本にまとめました。
全48章からなるこの「詩本草」は漢文体で書かれているが故に、
世に知られる機会は少なかったのですが、「旅」を通して和の「食」を紹介している本として、胸を張って世界に和食文化を紹介できる本ではないかと述べている。
今回紹介した本
「詩本草」柏木如亭著 揖斐高 校注<岩波文庫>
この「詩本草」は
先日受講した「すざか町並み楽習塾」の講義内にて、須坂市立博物館館長の涌井二夫先生より紹介いただきました。
そしてこの本の中で一番の読み所は、
第7章「蕎麦」。
「蕎麦は信濃を以って第一と成す」
から始まるこの章は、文化3年(1806)に柏木如亭が44歳の時に須坂藩領を訪れた時のことが書かれているのです。
如亭が訪ねた場所は須坂藩家老駒澤清泉<コマザワセイセン>宅。
如亭はそこで、清泉の琴を聞いたと思われるのですが、
清泉宅裏庭にて食べた「蕎麦」が日本一だと言っているのです。
日本国中を遊歴し、美食の数々を食べたであろう如亭が
「蕎麦は須坂で食べた蕎麦が日本一だ」
と言ってくれていたのです。
江戸時代のこととはいえ、実に嬉しいことですね。
このことは今後胸を張り、声を大にして言いたいのです!!