ぼた石積みとは、北信濃地域に多く見られる建物の基礎部分の石積みのことをいいます。
自然石ならではの表面の丸みを活かし、蟻の通る隙間も無いくらいに削り、積み上げていきます。
ぴったりとはまるように積むので、一つ積むのに数日かかる場合もあった位に手間のかかる仕事で、高等な技術を必要とした仕事だったのです。
この工法は、200年程前に下高井郡野沢村平林地区の丸山忠右衛門によって考案されたと伝えられています。
その地方では「平林積み」「丸石積み」なんて呼ばれているそうです。
江戸時代末期に黒船が来航した際に、江戸幕府はお台場に砲台を作ります。その際に砲台の基礎部分として、この「ぼたもち石積み(丸石積み)」が使われたそうです。
そのくらいにしっかりとした基礎ということです。
北信濃地域に多く残るこの石積みですが、建築された当時は重機も電動工具もありません。
これだけの石を運ぶのにも時間がかかりますし、加工にも時間がかかったはずです。
そこで疑問が残ります。
それは、江戸時代末期に考案されたこの石積み工法が、これだけの時間でこの広範囲に広まることができるものなのか。
現在この石積みを作ることのできる石工がいません。
現在須坂に残されたぼたもち石積みは、誰がどのように作った物なのかすら分かりません。
そして、一つ一つがぴったりとおさまるように加工を施しているので、一度壊してしまうと二度と同じようには積めないとのこと。
今となっては謎と共に貴重な存在ですね。
写真は「須坂クラシック美術館」のぼた餅石積み。
一つ積み上げるのに、今の価格で10万円はくだらないそうで、「須坂クラシック美術館」の蔵の見えているだけで44個のぼた餅石がありました。
単純計算で、基礎だけで440万円も掛かっていることになります。
こんな蔵の基礎部分を見ただけでも、蔵を建てた当時の須坂の豊かさを感じることができますね。そして、このような技術をもった職人が須坂地域にいたこと自体がすばらしいことではないでしょうか。
須坂市のあちらこちらにこのようなぼた餅石積みを見ることができますので、ぜひとも実物を見て、技術の高さを感じてみてください。
実物の「ぼたもち石」を見るとなかなか圧巻ですよ。