穀町

田中下屋敷

長野県須坂市穀町と上町の境で、寿泉院入り口に古い民家があります。
田中本家の分家に由来する田中下屋敷です。

手前の屋根に鉄板をかぶせてある建物が母屋で、その横の重厚な土蔵造りの建物が上店と呼ばれています。
明治10年に創業した上店は、奥に製糸場があり、通り沿いの店では原料繭の取引が行われました。


母屋は築200年は経つといわれています。
門をくぐって庭に出ると味噌蔵、米蔵、木材蔵が並び、庭には樹齢200年を超える松があるのだそうです。
町屋というよりも「武家屋敷」を思わせる作りであるとお聞きしました。

この母屋の建物で面白いのが「隠れ部屋」の存在です。
1階の天井の板戸が水平に開き、その先には四方が壁で戸の無い部屋があるそうです。
そんなことを考えても武家屋敷の名残が色濃く残る建物なのです。

また、母屋の二階には窓が作られ、それに合わせるように屋根が落とし込まれていることが見て分かります。
そしてその屋根の先が上店と繋がっています。
須坂市郷土史の専門家青木廣安氏の著書によると、母屋は上店と「切り妻落とし」によって繋がっていると表現されています。

この「切り妻落とし」は、母屋を建てたときからこのような作りだったのか、上店を作るた際にこうしたのかはわかりませんが手の込んだ作りであることは確実なのです。




須坂の町では、店の裏に母屋を建てることが多いのですが、この田中邸は、道と平行して店と母屋が並んでいます。
昔は間口の広さによって税金が変わっていたので、このような建て方が出来たということはそれだけ裕福であったということなのです。


現在は鉄板の屋根となっていますが、その昔は茅葺屋根であったのでしょう。
茅葺屋根の母屋と、瓦屋根の重厚な上店の光景を想像するととても美しかったのだろうなぁと思うのです。




田中下屋敷

住所:穀町
名前:田中下屋敷
取材日:2010/08/21
更新日:2021/10/26

参考文献

信州須坂の町並み<青木廣安著、丸山武彦絵須坂新聞社>
須坂の製糸業<須坂市教育委員会>

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